PFASは、世界全体で重要な環境問題として取り上げられています。日本では具体的にどのような規制が実施されているのか、気になるところですよね。
環境省と国土交通省が連携して各地で水質検査を呼びかけていますが、基準値を超えるPFASが検出された地域も少なくありません。
PFASの問題が発生した地方自治体では、その後数年にわたって対策を求められています。地域の水道水は、PFASが含まれていないか必ず検査しておきましょう。
本記事では、PFASの規制の詳細や水道水から除去する方法などを解説します。
地方自治体の水道担当者や水道事業者など、PFASの検査でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
PFAS(有機フッ素化合物)とは?
PFAS(有機フッ素化合物)とは、炭素とフッ素の強い結合を持つ人工的な化学物質の総称です。
耐熱性や耐薬品性に加え、撥水性や撥油性などの特徴があり、長年にわたって多くの用途で利用されてきました。使われていた用途の例としては、フライパンの焦げ付き防止加工・食品包装材・防水スプレー・泡消火剤などが挙げられます。
PFASは自然界ではほとんど分解されないため、土壌や水質を汚染したり人体に蓄積したりする可能性が指摘されています。
近年では免疫機能やホルモンバランスへの影響、発がん性など健康被害が懸念されるようになり、世界的に規制や使用制限の動きが強まっている状況です。
PFASの用途や健康への影響の詳細は、以下の記事を参考にしてください。
PFAS(有機フッ素化合物)とは? 主な使用用途や健康への影響も合わせて解説
日本で規制対象となっている3種類のPFAS
多くの種類があるPFASの中で、日本で規制対象となっているものは以下の3種類です。
- PFOS(ピーフォス)
- PFOA(ピーフォア)
- PFHxS(ピーエフヘキサエス)
ここから、規制の対象となっているPFASが「どのような製品に使われてきたのか」や、「人体に及ぼす影響」などを詳しく解説します。
PFOS
PFOSは、半導体の製造工程・金属めっきの処理・泡消火剤などの工業分野で広く使用されていたPFASの一種です。
PFOSには、他のPFASと同様に環境中で極めて分解されにくく、人体に蓄積しやすいという特徴があります。
体内に取り込まれると、肝臓への負担やコレステロール値の変化、免疫機能の低下が報告されており、発がん性の可能性も不安視されてきました。
健康や環境への深刻な影響が懸念されたことで、現在では日本を含む多くの国で製造や使用が規制されており、代替物質の利用が進められています。
PFOA
PFOAは、PFOSと並んで代表的なPFASの一種です。特に耐熱性や耐薬品性が高く、フライパンの焦げ付き防止加工や繊維製品、食品包装材の撥水加工などで利用されていました。
人体に蓄積しやすく、体内に取り込まれると肝臓機能への影響・コレステロール値の上昇・生殖への悪影響などが報告されています。また、発がんリスクの可能性も示唆されてきました。
日本でのPFOAの使用や製造は制限されており、現在は代替物質の利用が拡大しています。
PFHxS
PFHxSは、PFOSに性質が似ていることから代替物質として使われていたPFASです。
PFOSのように撥水性や撥油性に優れ、主に防水加工を施した繊維や泡消火剤などに利用されていました。
PFHxSも分解されにくく、環境中に長期間残留しやすい特徴があります。人体に蓄積した場合、甲状腺や肝臓などに悪影響が及ぶ可能性があると指摘されています。
体外に排出されるまでには長い時間がかかるため、健康リスクが高い物質といえるでしょう。
3種類のPFAS規制はいつから始まった?
PFOS・PFOA・PFHxSの3種類は、環境への残留性や人体への蓄積が懸念され、国際的な議論を踏まえながら日本での禁止措置が進められています。
国内で規制が始まった年は以下の通りです。
年 |
PFASの種類 |
2010年 |
PFOSの製造・輸入・使用を原則禁止 |
2021年 |
PFOAの製造・輸入・使用を原則禁止 |
2023年 |
PFHxSの製造・輸入・使用を原則禁止 |
最初に規制が始まったのは2010年のPFOSで、強い残留性が問題視され、国内での製造や輸入が禁止されました。使用は限定的にしか認められなくなっています。
続いて2021年にはPFOAが規制対象となり、さらに2023年にはPFHxSが追加されました。いずれも製造や輸入だけでなく、国内での使用も原則禁止とされており、現在は代替物質の利用を求められる段階に入っています。
また、国内のPFASの規制は、化学物質審査規制法(化審法)などを通じて段階的に導入されてきました。
日本では国際的な動きと歩調を合わせる形で規制が強化され、3種類のPFASにはすでに厳格な措置が取られている状況です。
世界の動向が日本のPFAS規制に与える影響
PFASは環境や健康への影響が世界的に問題視され、各国で規制枠組みが整備されてきました。
欧州連合(EU)では、化学物質を包括的に規制・管理するREACH規則や、残留性有機汚染物質を対象とするPOPs規則が先行し、国際的な基準づくりを牽引しています。
これらの国際的な動きが日本の制度にも影響を与え、国内のPFASの規制が進んでいます。
ここから、PFAS規制の世界の動向とそれらの動きが日本へ与える影響を詳しくみていきましょう。
REACH規則
REACH規則は、欧州連合(EU)が2007年に施行した化学物質の包括的な規制制度であり、化学物質の安全性の確保を目的として制定されました。PFASの製造から輸入、使用に至るまでの全過程を対象として厳しい規制が設けられています。
REACH規則ではPFASの中で、PFOSやPFOAなどすでに国際的に問題視されてきた物質だけでなく、その他の類似物質にまで規制されています。
EU加盟国では1万種を超えるPFASを対象に包括的な規制提案が行われており、世界的に注目を集めてきました。ヨーロッパのPFAS規制は非常に厳しいレベルにあると分かるでしょう。
こうした流れは国際的な規制の基準を形づくり、日本を含む各国の制度にも大きな影響を与えています。
POPs規則
POPs規則は、欧州連合(EU)が残留性有機汚染物質(POPs)を管理するために制定した規則です。2004年に国際連合で発効したストックホルム条約をEU域内で実施する役割を持っています。
POPsとは環境中で分解されにくく、生物や人体に蓄積しやすい有害性の高い化学物質を指します。PFASの中でもPFOSやPFOA、PFHxSは強い残留性が指摘されているため、順次POPs規則の対象に追加されました。
EUがPOPs規則を通じて積極的にPFAS規制を強化してきたため、国際社会でも規制の重要性が認識され、日本にも影響を及ぼしてきました。
その他のPFASを規制する規則
PFAS規制は、EUのREACH規則やPOPs規則だけではなく世界中で進んでいます。
アメリカでは飲料水の暫定基準値を厳格化するとともに、特定のPFASの有害物質規制法(TSCA)に基づく報告や使用制限を行っています。
1999年にアメリカで、廃棄物処理施設の近くで飼育されていた牛がPFASによって相次いで死亡する事例が発生しました。この出来事が大きなきっかけとなり、国際的にPFASの危険性が認識され、各国で規制強化の動きが始まったのです。
また、カナダやオーストラリアでも、PFOSやPFOAなどを対象に環境基準や排出規制が設けられており、各国独自のルールによる管理が進められています。
このようにPFASの規制は各国で厳格化が進んでおり、世界全体で排除される流れとなっています。
日本でも2026年に規制が強化される
日本では2026年4月1日から水道法の改正により、PFOSとPFOAに関する水質基準が厳しくなります。
基準値は水道水1リットルあたり、PFOSとPFOAの合算値で50ナノグラム以下です。1ナノグラムは1グラムの10億分の1であることから、相当少ない量のPFOSやPFOA混入ですら認められないと分かるでしょう。
さらに、この基準を満たしているかどうか、各地の水道事業者には、おおむね3ヵ月に1回以上の定期的な検査が義務づけられます。
基準を超過した場合には法的に改善措置を取る必要があり、管理体制は一段と厳格なものとなります。
国際的にはすでにさらに厳しいPFAS規制を導入している地域もあり、日本でも今後規制対象の拡大や基準強化が進む可能性が高いでしょう。
参考:環境省|「水質基準に関する省令の一部を改正する省令」及び「水道法施行規則の一部を改正する省令」の公布等について
PFASを除去するには?
PFASを除去する方法として、以下の2点から解説します。
- 水質検査と対策方法
- 家庭でできるPFAS対策は浄水器をつける
それぞれ詳しくみていきましょう。
PFASを処理する方法の詳細は、以下の記事も参照にしてください。
PFASの処理方法を徹底解説!処理に関する注意点と処理業者を選ぶポイントを紹介
水質検査と対策方法
PFASは極めて微量でも含まれてはならない物質であるため、正確な水質検査によって実態を把握しておきましょう。検査で基準値を超えるPFASが見つかった場合には、処理方法を検討する必要があります。
太陽油化では高感度の分析機器を用いたPFAS検査を提供しており、水道水や地下水、工場排水など多様な水質に対応可能です。
また、排水処理技術は、PFASの分解や除去に特化しており、環境への放出を抑えられます。
PFASの規制強化が進み、企業や自治体には一層の対応が求められています。太陽油化では分析から処理まで、PFAS対策のすべてをご提案可能です。
ぜひ以下のリンクより、太陽油化のPFAS対策の詳細をご確認ください。
PFAS(PFOA、PFOS、PFHxS)廃棄にお困りの方へ
家庭でできるPFAS対策は浄水器をつける
家庭で利用する水道水からPFASを除去するのに有効な方法が浄水器の設置です。
特に逆浸透膜や備長炭を利用した浄水器は、高いレベルでの除去効果が期待できます。簡単で取り入れやすい対策として、浄水器の活用は効果的でしょう。
まとめ|PFASは世界的に規制が強まっている
PFASは分解されにくく、人体や環境に蓄積する性質から、世界的に深刻な問題として扱われています。
現在、日本ではPFOS・PFOA・PFHxSの3種類のPFASが規制対象です。さらに2026年4月からは水道法が改正され、PFASの規制が厳しくなります。
地方自治体や水道業者には、正確な水質検査や処理対策が求められます。2026年以降にもさらに規制対象が拡大する可能性があるため、早めの対策が必要です。
太陽油化では、PFASの分析から処理まで一貫して対応でき、幅広い対策を提供しています。PFAS処理に関するご相談を、ホームページより承っております。
PFAS対策でお困りの方は、お気軽に株式会社太陽油化までご連絡ください。