近年、環境保全への意識が高まる中で、PCB(ポリ塩化ビフェニル)を含む廃棄物の適切な処理が強く求められています。
特に低濃度PCB廃棄物は、本来はPCBが使われていないはずの電気機器から見つかることが多く、気付かないまま保管されているケースも少なくありません。
低濃度PCBの処理期限は令和9年(2027年)3月31日までと定められており、期限を過ぎると法令違反で罰則の対象になる場合があります。
適切に処分を進めるには、PCBが含まれる可能性がある廃油を確認し、専門業者に依頼して計画的な対応が重要です。
本記事では、低濃度PCBの基礎知識や見分け方、処分までの流れなどを詳しく解説します。
低濃度PCBの基本情報|高濃度PCBとのちがい
PCBは含有濃度ごとに、処理方法や処分可能な機関が異なります。濃度ごとにPCB廃棄物の詳細を以下にまとめました。
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種類 |
PCB濃度(廃油の場合) |
処理を担当する機関 |
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高濃度PCB |
0.5%(5,000mg/kg)を超える |
中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO) |
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低濃度PCB |
0.00005%~0.5%(0.5mg/kg~5,000mg/kg) |
許可を受けた民間処理業者 |
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PCB濃度が極めて小さい含有物 |
0.00005%(0.5mg/kg)以下 |
産業廃棄物処理業者(通常の産業廃棄物処理場で処分可能) |
高濃度PCBは各地域に配置されたJESCOで処理できましたが、現在は処理期限を過ぎており、処分する方法がなくなっています。
低濃度PCBは都道府県知事の許可を受けた処理業者に依頼すると処分可能です。
PCB濃度が0.00005%(0.5mg/kg)以下であり、特にPCB含有量が少ないものは、通常の産業廃棄物として処分できます。
低濃度PCB廃棄物には3種類ある
低濃度PCB廃棄物には、以下の3種類があります。
- 低濃度PCB廃油
- 低濃度PCB汚染物
- 低濃度PCB処理物
それぞれ詳しくみていきましょう。
低濃度PCB廃油
低濃度PCB廃油とは、変圧器やコンデンサー、安定器などの電気機器に使用されていた絶縁油や潤滑油のうち、PCBが低濃度で混入しているものを指します。
製造時にはPCBを使用していない製品であっても、同一設備内でPCBが使用されていた場合、長年の使用による混入によって低濃度PCB廃油となるケースがあります。
見た目ではPCBの有無を判断できないため、必要に応じて分析を行い、PCB濃度の確認が必要です。
低濃度PCB汚染物
低濃度PCB汚染物とは、PCBを含む油で汚染された機器・部品・布・容器・汚泥などを指します。
たとえば、PCBを含む変圧器やコンデンサーの分解時に使用した布や、PCB廃油が付着した金属部品・保管容器の内側などがPCB汚染物です。
見た目ではPCBの汚染状況を判断できないため、PCBが付着しているおそれがある場合には処理前に分析する必要があります。
低濃度PCB処理物
低濃度PCB処理物とはPCBを含む廃油や汚染物を、焼却・分解などの方法で処理した際に発生する焼却灰や汚泥などの物質のことです。
処理工程でPCBの濃度が十分に低下し、0.5mg/kg以下となったものが「低濃度PCB処理物」として扱われます。
基準値を超える場合は再処理が必要となるため、処理後も分析によってPCB濃度を確認しなければなりません。
低濃度PCBが含まれる可能性がある廃棄物を見分ける3ステップ
低濃度PCBが含まれる廃棄物は、以下の手順で見つけましょう。
- 低濃度PCBを含む可能性のある機器を確認する
- メーカーサイトのPCB含有リストを確認する
- 必要に応じてPCBの分析を業者に依頼する
ここから、それぞれの手順を詳しく解説します。
1.低濃度PCBを含む可能性のある機器を確認する
PCBが問題視される1990年代以前の電気機器には、低濃度PCBが含まれている可能性があるとされています。
主に以下のような電気機器には、絶縁や冷却のために、PCBが混入した油が使われている場合がありました。
- 変圧器
- コンデンサー
- 安定器
- リアクトル
- 計器用変成器
- 遮断器
- 開閉器
- X線発生装置
- 電気溶接機
これらの電気機器の中でも、古い型のものを利用している場合にはPCB含有の確認が必要です。
製造時にはPCBを使用していなくても、同一工場や設備内でPCB含有油が取り扱われていた場合、PCBの混入や汚染が生じているケースがあります。
製造年代や型式を確認し、PCBが含まれるおそれがある機器を洗い出してください。
参考:公益財団法人産業廃棄物処理事業振興財団|低濃度PCBの調査及び適正処理について
2.メーカーサイトのPCB含有リストを確認する
低濃度PCBを含む可能性のある機器があれば、電気機器のメーカーがホームページなどで公開している「PCB含有リスト」を確認しましょう。
多くのメーカーでは、自社製品にPCBが使用されている可能性がある機器を一覧で公表しています。
リストには製造年・型式・PCBの有無などが記載されており、お手持ちの機器の確認ができます。
同じ型式でも製造時期によってPCBの有無が異なる場合など、例外もあるため、記載内容をよく読んでおきましょう。
3.必要に応じてPCBの分析を業者に依頼する
PCBが含まれている可能性がある場合や、メーカーリストなどで含有の有無を判断できない場合は、専門業者に分析を依頼する必要があります。
PCB濃度によって処分方法が異なるため、正確な濃度を確認しておかなければなりません。
濃度の分析は、環境省の登録を受けた分析機関や、PCB廃棄物の処理に対応している専門業者に依頼します。
PCB濃度が0.00005%(0.5mg/kg)以下であったり、PCBが含まれていないと確認されたりした場合には、通常の産業廃棄物としての処理が可能です。
処理方法を間違えると法令違反となる可能性があります。実績の多い信頼できる専門業者へ相談して、処理方法を間違えないようにしましょう。
PCBの分析に関して、以下の記事で詳しくまとめています。
PCB分析は2025年の実施を推奨|電気機器の絶縁油を必ず確認すること
低濃度PCB廃棄物の処分に関して
低濃度PCB廃棄物の処分は、法令に基づいた手続きと適正な処理が求められます。ここでは、低濃度PCB廃棄物の処分に関して以下の4点から説明します。
- PCB廃棄物の処分前後の手続き
- 低濃度PCB廃棄物の処理期限
- 処分期限を過ぎた場合の罰則
- 処分で利用できる補助金・助成金
平成13年7月に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特措法)」が施行され、低濃度PCBを処理するための制度が整備されました。
この法令により、事業者は適正な方法で廃棄を行う義務があります。
参考:e-Gov法令検索|ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法
PCB廃棄物の処分前後の手続き
使用中の機器に低濃度PCBが含まれていた場合は、管轄の都道府県または政令市へ「使用中PCB廃棄物届出書」を提出し、指示にしたがって適切に処理しましょう。
都道府県知事の許可を受けた処理業者と契約し、廃棄物処理法に基づいてマニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付する必要があります。
マニフェストは、廃棄物が適切に処理されたかを確認する伝票です。廃棄物の引き渡しの際に業者に渡して、処理が終わった後に返送されます。
また、処理が完了したら処理業者から受け取った処理完了報告書をもとに、自治体へ「処分終了報告書」を提出しなければなりません。
これにより、PCB廃棄物の処分が適正に完了したことを自治体に報告できます。
低濃度PCB廃棄物の処理期限は令和9年3月31日
低濃度PCB廃棄物の処理期限は、令和9年(2027年)3月31日までと定められています。全国共通の期限であり、すべての低濃度PCB廃棄物を適切に処理しなければなりません。
期限間際だと、処理施設への申し込みが集中して受け入れが遅れることもあるため、早めに準備を進める必要があります。
早めに専門業者に相談し、計画的に処分を完了させましょう。
処分期限を過ぎた場合の罰則
低濃度PCB廃棄物を期限までに処分しなかったことに対して、直接的な罰則はありません。ただし、行政からの指導や命令にしたがわない場合には罰則の対象となります。
行政からの改善命令に違反した場合や、求められた報告を怠った場合には、PCB特措法に基づき以下のような処分が科される可能性があります。
- 改善命令違反…3年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(第33条)
- 報告義務違反など…30万円以下の罰金(第35条)
また、届出を行わずにPCB廃棄物を保管していた場合は行政指導の対象です。
参考:e-Gov法令検索|ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法
低濃度PCB廃棄物の処分で使える補助金・助成金
低濃度PCB廃棄物の処分では、以下のような補助金・助成金を利用できる場合があります。
【公益財団法人産業廃棄物処理事業振興財団|低濃度PCB助成金】
中小企業や個人事業主を対象に、PCB分析費や処理費の一部を助成する制度です。対象経費の2分の1(上限あり)が補助されます。
【環境省|二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金】
低濃度PCBが含まれるおそれのある変圧器などの分析調査や、高効率変圧器への交換に対して補助が行われる制度です。PCBの分析調査促進や、設備更新による環境負荷の低減を目的としています。
上記2種類の国の補助金は年度・予算枠により変動するため、いつでも使えるわけではありません。利用を検討する場合、年度の助成金・補助金の詳細や予算枠の状況を確認してください。
また、これらの制度以外にも、各地方自治体で独自に補助金・助成金を設けている場合があります。地域で利用できる制度がないか、確認しておきましょう。
参考:公益財団法人産業廃棄物処理事業振興財団|低濃度PCB助成金
低濃度PCBの処分は多くのノウハウがある太陽油化にお任せください
太陽油化では、収集・運搬・中間処理・最終処分まで、低濃度PCB廃棄物の処分に関する作業を一貫して対応可能です。
環境省および都道府県の許可を受けた施設で、法令に基づいた適正処理を徹底しているため、安心してご依頼いただけます。
豊富な実績とノウハウを活かし、事業者の負担を軽減しながら、安全かつ確実な処理を実現します。
太陽油化が行うPCB廃棄物処理の詳細は、ぜひ以下のリンクよりご確認ください。
高濃度PCB廃棄物が見つかった場合はどうする?
高濃度PCBは中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)による処理期間が終了しているため、新規の処分は原則できません。現在は保管継続が義務付けられており、対応は自治体の指示に従う必要があります。
もし高濃度PCBが含まれている機器や廃棄物が見つかった場合は、速やかに管轄の都道府県または政令市へ連絡してください。
自治体から、保管方法や今後の対応方針に関して指示を受けることになります。
自己判断での処理や廃棄は法律で禁止されているため、必ず行政の指示を仰ぎましょう。
まとめ|低濃度PCBの処分は余裕をもって進めよう
低濃度PCB廃棄物は、令和9年(2027年)3月31日までに処分を完了しなければなりません。
PCB特措法に基づく全国共通の期限であり、期限を過ぎると法令違反に問われるおそれがあります。
処理には分析・届出・契約・運搬・最終処分など、複数の工程が必要なうえ、申し込みが遅れると処理施設の受け入れが難しくなる場合もあります。
まずは、保管している機器や廃油にPCBが含まれていないかをメーカーサイトで確認して、早めの専門業者への相談が必要です。
PCBの処分は余裕をもって計画的に進めると、安全かつ確実な処分につながります。
低濃度PCBの処分でお困りの方は、PCB処理で多くの実績やノウハウをもつ太陽油化まで、ぜひお問い合わせください。
以下のリンクでは、太陽油化で行うPCB廃棄物処理の詳細を説明しています。







